アクション映画としてこれ以上ないスムーズなテンポで進んでいく本作は、観ていてとても爽快だ。無駄を極限まで排し、サクサクと軽やかに進行していく。無駄に派手なシーンなども一切無い。

元CIA工作員であるブライアンの最愛の娘キムが、パリへの旅行中に犯罪組織に攫われてしまう。そこで彼女を犯罪組織から救い出し、最愛の娘を攫った組織を壊滅させるべく、ブライアンはCIAで培った能力を活かして犯罪組織に迫っていく。
アクションを成立させるための最低限の動機付けがされているのみで、ストーリーや設定に特筆すべき点はない。いや、むしろ奇を衒った作品ばかりが増えてきている近年の映画作品の中にあってそのシンプルなストーリーこそが本作の特筆に値する点かもしれない。とにかくシンプル、だが決して手抜きという訳でなく、僅かしかない人質救出の猶予時間の中で、犯人の構成、手口、アジトなど全く無駄のない見事な手法で暴いていくさまには思わず舌を巻く。
物凄いスピードで展開するストーリーと、魅力的ながらも実戦的でどこか淡白なアクションはマッド・デイモン主演のボーンシリーズを思い起こさせる。そのほかブルース・ウィリスの『ダイ・ハード』やシルベスター・スタローンの主演していた往年のアクション映画も、思えばこうしたシンプルでありながら痺れるような作品だった。
そういえばエクスペンダブルズ2のインタビューか何かでスタローンは、"昔のヒーローは特殊な能力など持たない普通の人間だった。この作品を観ればその頃のヒーローのカッコよさを思い出してもらえると思う"こうした旨の発言をしていた気がする。
本作のサプライズヒットの要因も観客の心の中にそうした思いが少なからずあるからではないだろうか。

全くの余談だが気になって調べてみたら、この映画で主演しているリーアム・ニーソンは演技の道に進む前にはアマチュアのボクサーだったらしい。道理でバットマン・ビギンズでのブルースとの格闘がボクサー風だったわけだ。あれほどの巨躯で元ボクサー、おまけに殺人術を仕込まれた元工作員。犯罪組織の構成員にも恐怖であったに違いない。

とにもかくにもこの作品は、クールで無駄が無く、潔くアクションで勝負している。勿論優れたアクション同様、ストーリーもシンプルでありながら素晴らしく、作品の味を増すものとなっている。
鑑賞後にはスカッと気持ちのいい後味が残る、生粋のアクション映画である。

是非鑑賞していただきたい一本だ。